- 2013.11.21 Thursday
『京都府 M.Y 様の靴』
『京都府 M.Y 様の靴』
今回のオーダーは狂言師のお客様から。
足に合う靴が無いということで悩まれていました。
採寸してみると、たしかに
既成靴で作られているものではサイズが無く
どうしても大きくなってしまうでしょう。
骨格としては骨張った足ですので
余計に当たりを感じやすい足です。
対照的に内ふまずの筋肉がしっかりついています。
骨の位置やくるぶしの高さ、筋肉の付き方を正確に反映し、
木型を制作しました。
デザインはライトアングルステッチと呼ばれる
ハンドステッチの技法を使ったUチップです。
以前、当工房で
このライトアングルステッチで作った靴の写真を見て
このUチップで作りたいというイメージがあったそうです。
以前作ったときのデザインは外羽根のデザインだったのですが
M.Y 様と打ち合わせを重ねた結果、
今回はサドル
(甲部分に馬の鞍ような独立した革が載っかってるデザイン)
のライトアングルでいこう
ということになりました。
サドルシューズというとアメリカの
学生靴やスポーツシューズ、
ロカビリーやロックンロールのファッションとしての
アメリカンなイメージが強いですけど
元々はイギリスで生まれたデザインだそうです。
イギリスのサドルはたしかにアメリカのサドルと比べると
もっとクラシックで繊細な印象があります。
意識をしていたわけではありませんが
クラシックな印象という点でいえば
今回創ったサドルはイギリス寄りのサドルですね。
しかしサドル部分を変形的にすることで
シャープでより華奢な表情を醸し、
そこにライトアングルステッチが入ることで
若干ワイルドな力強さも付加され
これまでにない雰囲気のサドルシューズ
が出来上がったのではないかと思います。
デザイン画ではライトアングルをベースに
数点描いた中から
M.Y 様がこのサドルにしたいと選ばれました。
実際に創ってみて、作り手としても想像以上の
とてもおもしろいものになったと思います。
M.Y 様のこのときの選択に感謝したいですし、
こういうことが、使い手と作り手が共に創り上げていく
醍醐味だなぁとあらためて感じました。
M.Y 様が初めて工房に来られたとき
レコードを流していたら
ジャズで好きな曲があるという話になりました。
「My foolish heart」
奥さんとの思い出の曲だそうです。
今回は代表的な作品
Bill Evansの「My foolish heart」を流しながら
M.Y 様の靴を制作しました。
今回の撮影は出町柳から叡山電鉄界隈。
M.Y 様と私にとってはゆかりのある場所なんです。
M.Y 様の舞台を観たり、
飲む機会もこのあたりが多いですしね。
出町柳駅から線路横を自転車で走りました。
途中で見つけた線路沿いの眺めを見つけ
Shoe Scape【靴景観】を撮影しました。
M.Y 様は「狂言師」、
私は「靴職人」ですが、
やっている職業こそ違えど何かを生み出していくこと
表現していくということなど
共通する部分は多いと思っています。
私は狂言のことはまだまだ分かっていませんが
舞台を観て感じたことや受ける刺激は
自分の制作にも反映されます。
これからもいろいろな舞台で
M.Y 様が生み出す表現を観せていただき
お互いの職業の隔たりなく
表現について話し合っていけることを
とても楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
そしてうれしい言葉をありがとうございます。
私としても、とても楽しい時間でした。
山下様に履いていただくこの靴が
どう変化していくのか、
またメンテナンス等含め、
その経過を見守り続けられることを
楽しみにしています。
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
Shoe Scape 萩原